建設現場の仮囲いデジタルサイネージ ~現場が伝えたい事と見る側の相違とは?~
建設現場の仮囲いに設置するデジタルサイネージですが、その意図は「近隣住民に現場の理解を得るための情報発信」をすることです。皆さんは建設現場の仮囲いサイネージに映し出される情報を、興味深く見入ったりすることはあるでしょうか?
実は広告を流す一般的なデジタルサイネージにも言えることなのですが、自分の興味がある情報に関しては注目することはあっても、関心のないものはほとんど見ることがありません。
テレビのチャンネルを選んだりYouTubeを見るときは、面白そうなものや自分の興味のあるものを選びますよね?そういう意味ではほとんどの仮囲いサイネージは、人々に注目されることのないものになっています。
例えば工事のスケジュールや騒音の数値(デジベル)などの情報開示をしている仮囲いサイネージをよく見ます。もちろん現場が伝えたいことはわかるのですが、そればかりだとほとんど見られない、単なる自己満足のものになってしまいます。
現場の仮囲いサイネージに流すコンテンツは自分が見る側に立って考えることで、本当の意味で近隣住民の理解を得ることができるのです。
仮囲いのデジタルサイネージでよくあるコンテンツとは?
それでは現在、仮囲いのデジタルサイネージで表示されている主なコンテンツを紹介します。
①工事の週間スケジュール
週間の工事予定をデジタルサイネージに表示して、近隣住民の理解を得ようとするコンテンツです。現場は囲われており、外から中を見ることができません。そのため、現在囲いの中でどのような工事が行われているか、これから行っていくかを表示します。
②騒音表示
建設現場が出す騒音の大きさを表示します。しかし、デシベル値を表示しても実際にうるさいかうるさくないかが重要で、見る側にとってはあまり価値のある情報ではありません。それなりの意味はありますが、大々的に効果を謳うようなものではないでしょう。
③振動表示
工事現場で発生する振動の目安を表示します。こちらも体感するかしないかがポイントで、ほとんど注目されることはないでしょう。振動の数値を表示されても「だから?」と感じるのは私だけでしょうか。
④建設完了後のイメージ
建設中の建物の完成イメージを流し、未来の街の姿を想像してもらいます。文字情報ではなく映像は注目されやすく、住民にも理解を得やすいコンテンツです。
⑤「ご迷惑をおかけしています」おじさん
作業員が一礼している、よく目にするコンテンツです。無いよりはあったほうが良い程度のものです。入口のガードマンさんに挨拶される方がよっぽど気持ちが良いと感じます。
以上、もちろん全て意味があり、現場側が伝えたい情報であることは間違いありません。しかし「住民の理解を得る」ということは、現場の情報をただ発信するだけではなく、住民への思いやりも必要となるのです。
結論として「現場が伝えたいこと」と「住民が知りたいこと・住民のためになること」を織り交ぜた情報提供が、最も価値のある仮囲いサイネージになるのではないでしょうか?
現場が伝えたいことにプラスすると価値が上がるコンテンツ
前述のように「現場が伝えたいこと」だけでは近隣住民の理解を得ることは困難です。したがって、住民が興味のあることやためになることを表示すれば、よりデジタルサイネージの注目度が上がり、現場に対する住民のイメージを向上させることができます。
①天気予報やニュース
街中のデジタルサイネージでも広告だけでなく、たまに天気予報やニュースを流すのは、デジタルサイネージをより意味があり、注目されやすくするためです。仮囲いサイネージに採用すれば、同様に注目を得やすくなるでしょう。
②健康に対する注意喚起
感染予防策や手洗い・うがいの推奨など、住民の健康を思いやるコンテンツも有効です。夏場は熱中症対策、冬は風邪の予防法などを表示して住民への感謝の気持ちを表しましょう。
③防犯対策
明るく映像を表示するデジタルサイネージは、ある意味街灯の役割も兼ね備えています。夜間は画面を映しているだけでも犯罪の防止につながっていると言われています。痴漢やひったくりに対する注意喚起を行うことも意味があります。
④地域の情報
地域のイベントや夏祭りなどの情報を近隣住民と一緒になって考えます。住民とのコミュニケーションを持つことができ、現場や現場で働く人に対するイメージがUPします。
これらのコンテンツもそれだけでは単なる住民サービスとなってしまいます。そのため現場と住民を思いやるコンテンツをバランスよく織り交ぜることがポイントになります。
近隣住民の建設現場に対するイメージ
私の家の近所でもビルの解体工事が行われていて、毎朝騒音や振動があります。当然良い気持ちはしません。あまりにひどいときはクレームを言いたくもなります。しかし、毎朝警備員の人が気持ちよく挨拶をしてくれます。それでなんとなく許せているような気がしています。
建設現場は近隣住民にとって決して喜ばしいものではありません。騒音や振動、大型トラックの出入り、粉塵の影響…。仮囲いにデジタルサイネージを設置したからといって、これらの住民の不満が解消されるわけではありません。
少しでも現場のイメージを損なわないために、住民に対して思いやりのあるコンテンツも意識して流してみてください。